伝統建築の調査

体系的な研究を通じ、伝統建築の現況と歴史を整理・記録し、原形の保存に活用するための事業である。具体的には、精密実測による重要木造・石造建築文化遺産の記録と保存、北朝鮮の伝統建築に対する実測調査、建築模型の製作による様式・技法の研究などで、その結果は調査研究報告書として発刊されている。



木造建築の調査・研究

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木部材の乾拓

事業開始初期には、寺院建築が中心であったが、90年代以降は儒教建築を中心に、1990~1995年にかけて国家指定遺産にあたる書院建築の調査を行った。また1996年~2004年にかけ、全国にある郷校を地域別に調査した。

韓国建築史研究資料の発刊

木造建築物のうち、国家指定遺産は325件(国宝22件、宝物120、重要民俗資料143、史蹟40)ある。これらは当時の文化の総体として貴重な文化遺産である。韓国建築史研究資料の発刊は、指定遺産を機能別に分類し、各建物の平面・配置の実測、細部様式・技法の調査、精密写真撮影・関係文献記録などを調査するとともに、時代別・地域別特性を研究分析して報告書として発刊する。その目的は、韓国建築文化を理解するための学術資料を提供し、体系的な保存政策樹立の基礎資料として活用することにある。

1972年から開始された木造建築物の調査は、国家指定建築文化遺産の多数を占める仏教建築を中心に、1989年までに52件の調査が行われた。1990年からは儒教建築物を対象に調査を開始し、1995年までに国家指定遺産の書院6件の調査を終えた。1996年からは、全国の郷校建築の道別調査を進めている。これらの成果は、1976年から毎年『韓国の古建築』として発刊している。2000年度は、調査された全国の郷校を地域別にまとめ、儒教建築叢書第Ⅰ集(ソウル・京畿郷校建築)を発刊し、2001年には第Ⅱ集(江原道の郷校建築)を発刊した。2002年には儒教建築叢書第Ⅲ集(慶尚北道の郷校建築、南西部篇)、2003年には第Ⅳ集(慶尚北道の郷校建築、北東部篇)の発刊している。2004年には、慶尚南道の調査報告である第V集(慶尚南道の郷校建築)を発刊した。

民家の調査

現代化の中で急速に消えゆく韓国民家の歴史を研究するため、全国に分布する韓国伝統・固有の民家を対象に、平面構造や配置の特性、構造技法、生活風俗などを比較している。1971年から年次計画によって調査が進められ、その結果は報告書として発刊している。文化遺産指定・地方別の平面構造・配置の変遷などを理解する上で非常に重要な事業である。1994年には、民家調査報告書(全羅南道・全羅北道篇)を発刊した。

石造建築の調査研究

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石塔の精密実測のための足場設置

石塔、浮屠、石窟、石氷庫、石橋、城郭など石造建築物全般を対象とし、これまで石塔を中心に調査が行われた。全羅南北道の調査が完了しており、現在は慶北道地域の石塔調査が進められている。

石塔の実測調査

石造文化財の中でも石造建築物に分類される石塔、甎塔、模塼石塔、石橋、幢竿支柱、石窟などが対象である。その数は、地方指定遺産まで入れると1,800件余りであり、国家指定遺産のみでは国宝、宝物の場合540件(国宝72件、宝物468件)である。そのうち石造建築文化遺産は233件(国宝34件、宝物199件)であり、石塔は187件である。同調査は、精密実測図の作成と写真撮影、保存状態、拓本、関係記録などを調査し、石造文化財の保存管理に有用な資料を提供することを目的としている。また調査資料に基づき、様式・技法を解明し、学術資料として提供する。

1977年以降の年次計画に従い、石造建築物の中でも石塔の調査が優先的に行われてきた。2004年から本格的に石造文化財の記録保存を実施し、全羅北道(2004年)、全羅南道(2005~2006年)、国指定石塔の調査および記録化を終え、2007年からは慶尚北道の石塔調査を行っている。

建築技法の研究

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伝統建築の建造技法

伝統建築物の解体補修時における架構、部材の結構、裁断・加工技法などの建築技法を詳細に調査・記録して伝統建造技法の原形を保存するための事業だ。調査内容を報告書として発刊し、学術研究・補修復元の基礎資料として活用している。斗栱や架構の模型を製作し、学術研究・展示、教育資料などに活用している。

2010年より、個別の建築文化遺産に対する修理工事報告書に基づき、解体修理資料集を発行する作業を推進し、『建築文化財解体修理資料集』を発行している。これにより、個別の建築技術に関する研究が進められている。

伝統建築の模型製作

解体補修の現場で対象物の建築・架構の形式、部材の結構、裁断・加工技法などを調査し、拓本や現況写真によって記録する。これらの資料に基づき、対象の模型を製作する。1991年から優先的に解体・補修された国家指定木造建築の模型36件の製作を完了している。今後は東洋3国の木造建築比較研究のため、中国・日本の木造建築へと拡大していく計画である。

北朝鮮所在の建築文化遺産調査

北朝鮮国内の寺院文化財を中心に、実測調査や写真撮影など行い、その原形の記録・保存事業を行っている。韓国建築史という枠組をさらに広げ、幅広い建築文化遺産研究の基礎資料の提供を目的としている。

北朝鮮所在の寺院建築物実測調査

北朝鮮の建築文化遺産の調査を行い、韓国建築文化の総合研究を目指すことを目的とする。同調査は、国内の建築文化遺産と同様の調査を北朝鮮において行い、実測による平面図・配置図の作成、細部様式・技法の調査、精密写真撮影・関係文献記録などを調査し、これを学術資料として提供することにより、幅広い建築遺産研究の基礎資料として活用する。

同事業は2004年から始まり、北朝鮮における指定遺産のうち仏教建築物を中心に、2008年までに28件の調査が行われ、2007年には初めての報告書が発刊された。

研究成果

1994 民家調査報告書
1992-95 国宝・宝物縮小図面集Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
1973-2003 韓国の古建築1号~25号
2000 ソウル・京畿道の郷校建築
2001 江原道の郷校建築
2002 慶尚北道(南西部篇)の郷校建築
2003 慶尚北道(北東部篇)の郷校建築
2004 全羅北道の石塔
2004 東廟の建築
2005 全羅南道の石塔Ⅰ
2005 東京大学所蔵韓国建築・考古資料
2006 全羅南道の石塔Ⅱ、Ⅲ
2007 北朝鮮の伝統建築1・2
2007 建築遺跡発掘調査資料集-寺院編Ⅰ、Ⅱ
2007 中国山西省の古建築 - 資料編
2007 慶尚北道の石塔Ⅰ
2008 北朝鮮の伝統建築3
2008 建築遺跡発掘調査資料集-寺院編Ⅲ
2008 崇礼門火災被害の現状および収拾報告書
2008 崇礼門復元資料集
2008 慶尚北道の石塔Ⅱ
2009 慶尚北道の石塔Ⅲ
2010 慶尚北道の石塔Ⅳ
2010 建築遺跡発掘調査資料集-古代宮殿編Ⅰ
2010 建築文化財の解体・修理資料集-寺院建築編
2010 建築遺跡発掘調査資料集-古代宮殿編Ⅱ
2011 慶尚北道の石塔Ⅴ
2011 建築文化財の解体・修理資料集-宮殿・官衙・陵廟・その他の建築
2012 建築文化財の解体・修理資料集-石塔編
2012 慶尚北道の石塔Ⅵ
2012 韓国古代建築の基壇(1)
2013 弥勒寺址石塔舎利荘厳図録
2013 韓国古代建築の基壇Ⅱ
2013 慶尚北道の石塔Ⅶ
2013 中国河北省・遼寧省の古建築

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