研究現況
遺跡探査
国立文化遺産研究院は埋蔵遺産の研究と関連した地下内部構造を把握するため、地球物理探査方法を導入し、遺跡探査を行っている
文化財探査とは?
文化財探査は、地球物理学を中心に、電子工学、コンピューター技術を駆使して埋蔵 文化財の発掘など、文化財調査 ·研究を支援する領域である。
埋蔵遺産発掘前の地下探査を行うことで、文化財の位置と深さ、大きさ、分布など をコンピューターで映像化し、考古学者の発掘計画樹立に体系的 ·科学的な資料を提 供している。
考古学的調査と科学的探査によって得られた資料を比較 ·検討 ·研究することにより、 発掘の期間 ·費用の節減が可能となり、計画の樹立や調査への活用が大いに期待され ている。また現在、物理的な調査が不可能な国家重要文化財などに対する探査を行う ことで、考古学的研究資料も提供することができる。
地下透視レーダー探査
GPRは、電磁気波を地表面から地下に送出し、これを受信するのにかかる時間を測定 し、分析する技術である。古墳、建物址、貝塚、窯といった埋蔵遺産の調査に有用 である。
慶州月城(史蹟)
慶州は新羅千年(B.C.57~A.D.935)の都であり、月城はその王城である。月城は、全 体周囲1841メートル、東西長860メートル、南北長260メートル、城内面積は112,500㎡(約34,000坪) (約34、000坪)である。1980年代から垓字地域を中心に発掘が行われている。 城内は発掘を行わず保存されているため、GPR探査によって有用な資料を得ている。
結果の解析
GPR探査結果方形建物址7棟(3×4間規模前後)と、 塀の石列が確認された。南では、様々な規模を持 つ長方形建物群の根石が確認された。
城内の推定出入口が確認された。城壁の低い部分を 中心に、塀がめぐらされており、防御施設と推定さ れる建物址が見つかった。石氷庫と隣接する方形 建物址2棟が確認され、1区域の建物址7棟とつな がる可能性がある。
この場所において幅40メートル以上の閉曲線が確認された。GPRみら垂直断面内では、皿の断面図のよ うに映っている。城内西辺の地表調査で確認され た池址と規模や形が似ており、深さ50センチほど の池遺構と推定される。
城の東端部に該当し、5個の大型礎石が地表に露出 している。探査の結果、推定よりもはるかに大き い建物址であることが分かった。また周辺からも 建物址が数棟確認された。城壁の傾斜面と平地の 接点には石列が並んでおり、排水路と推定される。
電気比抵抗探査
電気比抵抗探査は、地下の関数率や溶解イオンの濃集度、粘土、砂、砂利など構成物、 風化の程度などによって変化する電気伝導度の物理性質の差を測定するもので、地下 層の構造 ·土質差の把握に有効である。古墳、建物址、窯、貝塚といった遺跡にも活用できる。
慶尚北道慶州感恩寺址(新羅)
電極配列法は、地下の土層構造に最も類似する形態を 示すため、遺跡 ·地質の調査に多用されている。同図 は、慶州感恩寺址石塔の北側地下層構造の探査結果で ある。地表から地下約2メートルの間で高い比抵抗率 を持つ地域は、建物建立のための地固め層(築土層)と 考えられ、地下7メートル以下の高い比抵抗値段を持 つ場所は岩盤層と推定される。
江原道襄陽柯坪里住居址(鉄器時代)
電極配列法は、電極の移動が容易で低電流でも良い数値が得られるため、調査したい 深さを平面的に探査できる長所がある。この結果は、鉄器時代の「呂」字形住居址に おける平面探査の結果である。内部において高い比抵抗値を示す場所は、しっかり固 められた層と判断される。
磁力探査
磁力探査は、人間の活動によって土壌の鉄成分含有量が変化、もしくは火の使用によっ て物体が磁力を得た場所の調査に有効である。調査対象は、窯、かまど、野外炉、製 鉄遺跡などである。
慶尚北道慶州蓀谷洞勿川里の窯跡(新羅)
磁力探査
慶州蓀谷洞勿川里遺跡は、競馬場の予定地 として発掘調査され、大量の窯跡が確認さ れた。プロトン磁力計を利用し、総磁力の 強さを測定した結果、探査地域内でいくつ かの双極子が確認された。一般的に、火を 付けた焚き口が最も高温となるため、ここ から強い磁力の測定値が得られ、双極子が 形成される。
航空撮影
考古研究室では、無人のラジコンヘリを飛ばし、航空撮影を行っている。航空撮影は 2人1組で無人ヘリとカメラを地上から操縦し、カメラ ·動画撮影を行っている。