研究現況
歴史記録遺物研究
自然の風化と人的災害などにより損傷を受けている金石文と朝鮮王朝儀軌など、動産文化財記録資料を調査して記録文化遺産として保存し、文化財関連記録を確保することにより、研究を掘り下げていくことを目指した事業である。
金石文総合映像DB構築
国内外に散在する先史時代~朝鮮時代までの金石文資料を集大成し、テキスト(判読文、訳文、注釈、概観、参考文献など)と、イメージ(実物、拓本)の総合映像DB構築事業を進めている。ウェブサイト上で金石文資料の検索を可能にし、研究者に学術基礎資料を提供する一方、先人の記録文化に触れ、理解するための一般向けの多彩なコンテンツを開発している。
2002年から2007年にかけ、およそ3,000件のテキスト・イメージ資料が構築されており、今後も持続的な関連研究資料の拡充、新資料の発掘を進めていく。
資料情報を共有し、活用度を高めるため、「韓国歴史情報統合システム」および「韓国古典翻訳院」と連携してサービスを提供している。
金石碑文調査光景
金石文総合映像DBの構築状況
先史時代~朝鮮時代にかけての金石文のテキスト(原文・翻訳・注釈、概観、参考文献目録)やイメージ(拓本・実物)資料を映像データベース化し、国家レベルでのアーカイブを構築することを目的とする。金石文資料をウェブサイト上で閲覧でき、研究者の学術振興を図るとともに、一般向けの様々なコンテンツを設けている。2002年から2006年までに構築した先史時代~朝鮮時代の2,932件の金石文資料は「韓国金石文総合映像システム」を通じ、サービスが行われている。
金石文とは
広義の金石文は、歴史学の基本資料である紙媒体の書冊(文献資料)、文字記録でない考古発掘資料を除く文字資料を指す。具体的には、青銅など金属に施された金文と、碑石など石材に施された石文の総称である。
一般的に、石文が多数を占めるが、中国吉林省集安市禹山下古墳群にある高句麗の広開土(クァンゲト)大王陵碑、新羅の真興(チンフン)王巡狩碑、死者の身元と行跡を記した高麗墓誌、朝鮮地方官の善政をたたえる頌徳碑など、古代~朝鮮時代にかけ、多くが現存している。
金文としては、百済王が倭王に送った「七支刀」があげられる。これは剣身の両面に文字を刻んで金象嵌した鉄剣で、当時の日本と百済の外交関係を理解する上で貴重な資料である。また高句麗広開土王代の儀礼容器の底に「壷杅」の字が施された鋳造器、光背に製作の経緯を刻んだ仏像光背なども、代表的な事例である。
上記のような金文や石文だけでなく、土器に記された土器銘文、木をきれいに削って記された木簡の記録、織物に書かれた布記、古墳の壁に筆で記した墨書銘、漆器に記された墨書、瓦や塼銘などは、包括的な意味において歴史の理解を豊かにする記録遺物だといえよう。
動産文化財の学術調査
本事業は、韓国所蔵の非指定動産文化財(絵画・彫刻・工芸・典籍類など)を調査・研究することによりその価値を究明し、国家遺産の指定検討資料を提供するところにその目的がある。2007年には、肖像画指定調査の一環として高僧真影23点を調査し、 その結果、「桐華寺四溟大師真影」が宝物に指定された。
2008年には、パリ国立図書館所蔵の「輿地図」など、韓国・海外の主な古地図や朝鮮王朝の「懿仁王后殯殿都監儀軌」など、計1997件の儀軌を調査した。2011年には、研究院所蔵の400件の古文献に対する全数調査が行われ、その結果、2012年には古文献の書誌情報と解題を収録した目録が刊行された。そのうち、「王世子入学図」などの3点の記録画(2011)と朝鮮王陵の泰陵誌などの関連訳注書(2012)を、調査・研究を経て冊子を発行しつづけている。