文化遺産の融合・複合研究

貴重な文化財の原形を永久保存するため、現代の科学知識と技術を応用し、文化財の損傷原因研究および遺物の製作技術とその技法解明などを行っている。これに関連し、石造文化財の保存および評価技術の研究、文化財の保存環境調査研究、古代の遺伝資源の系統学的研究、土器の焼成特性および顔料の非破壊分析・特性研究、有機質文化財の保存・保管技術の研究など文化遺産の融合・複合研究(R&D)を行っている。



文化遺産の融合・複合研究

image 石造文化財
image 環境調査
image 実験
image 人骨の調査

石造文化財の保存および評価技術の研究(R&D)

image

超音波による石造文化財の物性測定

最近では、工学および自然科学分野からの石造文化財の物性評価技法に関する研究が試みられているが、構成材質の地質および岩石学的研究結果に基づいた非破壊評価技法がほとんどない状態なので、これに関する研究が何より必要とされている。また、超音波探傷検査、エコチップ硬さ計、水分計などの表面物性の測定方法はおもにコンクリート、土壌などの分野に広く利用されているため、表面の非均質な様々な種類の岩石の石造文化財にはそのまま適用することができない。したがって、この研究では韓国の石造文化財の実状に 合わせた探査および測定方法の構築と、それによる表面の風化度の評価技法を開発するための研究を行う。そのためには非破壊診断方法の検証や実験データを現場に適用できる研究を行う必要があり、その研究結果を総合して国内や海外の石造文化財の物性を非破壊方法によって評価する技法の完成を目指す。

風化損壊マップに関する標準マニュアルの構築

目的:
石造文化財の損壊状態に関する記録・評価方法を統一した標準マニュアルの構築

内容:
1.風化損壊形態など、第1次表記法の統一化を提示
2.現場適用性の研究・活用案の摸索

image 処理前状態
image Auto CADによる作成
image 風化損壊マップの完成

充填剤、表面強化剤、接着剤の性能評価法設定

目的:
石造文化財の保存処理現場で活用できる適合した保存処理剤の選定と物理化学的試験方法の標準化

内容:
1.岩石分析・風化の判別
2.石造文化財の保存処理剤の品質試験法調査・物理的特性試験法の研究
3.多様な非破壊方法を活用した強化剤による表面強度の変化研究
4.風化岩盤を対象にしたエポキシ樹脂の接着力テスト
5.岩種別、処理剤別、風化状態別の処理方法研究
6.人工風化(凍結・融解、酸性雨の噴霧実験)・屋外暴露性能評価実験

image 強化用保存処理剤の実験
image 充填剤の物性測定
image 超音波速度の測定
image 屋外暴露実験

現場適用技術の開発研究

目的:
長期モニタリングによる保存処理の問題点調査・安全性の確保

内容:
1.対象岩盤の処理前・後における力学的・物理的特性の試験
2.処理後コアリングによる直接サンプリング・分析
3.特性評価方法の分析

image 現場適用Ⅰ
image 現場岩盤の超音波速度測定
image 現場適用Ⅱ
image 現場適用Ⅲ

研究実績

研究論文

  • 保存科学研究、「国内国家指定石造文化財の現況と統計分析」(2006)
  • 保存科学研究、「慶州南山磨崖仏岩石の物理的特性研究」(2007)
  • 鉱物学会誌、「慶州南山石造文化財を対象とする保存処理剤の処理に関する定量的 評価」(2007)
  • 文化財科学技術、「ドイツ文化遺産の研究動向と発展課題」(2007)
  • 文化財科学技術、「石造文化財の風化損壊地図標準化の研究」(2008)
  • 韓国鉱物学会誌、「慶州南山花こう岩を対象としたエチルシリケートを利用した強化 処理の定量的評価」(2008)
  • 保存科学研究「石造文化財の保存処理剤の現況調査-接着・充填剤と撥水・強化剤を 中心に」
  • 保存科学研究、「人工風化実験を利用した保存処理剤の物性変化研究」(2008)
  • 保存科学研究、「泰安磨崖三尊仏の保存科学的毀損度診断と保存環境分析」(2008)
  • 文化財保存科学学会誌、ソン・チヨン、チョン・ビョンギュ、ハン・ミンス、イ・ ジャンジョン、キム・サドク
  • 「石造文化財に適用するための強化剤および充填剤の現場実験:超音波速度を利用し た第一次検証」(2009)、25(1)、pp87~100.
  • 文化財保存科学学会誌、ソン・チヨン、ハン・ミンス、イ・ジャンジョン、チョン・ビョンギュ、ト・ミンファン
  • 「鎮川・沙谷里磨崖如来立像の損傷度診断と保存処理」(2009)、25(3)、 p323〜333.
  • 文化財保存科学学会誌、ソン・チヨン、ハン・ミンス、イ・ジャンジョン、チョン・ ビョンギュ、ト・ミンファン文化財保存科学学会誌、ソン・チヨン、ハン・ミンス、 イ・ジャンジョン、チョン・ビョンギュ、ト・ミンファン
  • 「石造文化財の保存処理に用いられる混合充填剤の特性分析」(2009)
  • Collection of dissertations presented at the International Symposium on Cultural Heritage Conservation : Lee Jang jon, Han Min su, Jeon Byeong gyu, Song Chi young
  • 文化財保存科学国際シンポジウム発表論文集、イ・ジャンジョン、ハン・ミンス、 チョン・ビョンギュ、ソン・チヨン、「Quantitative evaluation for effectiveness of consolidation treatment by using the Ethyl Silicate」
  • 保存科学研究集、イ・ジャンジョン、ハン・ミンス、ソン・チヨン、チョン・ビョン ギュ、ト・ミンファン、「英陽砂岩を対象としたエチルシリケート系列処理剤の強化 効果に関する評価」(2009)、pp126〜136.
  • 保存科学研究集、キム・ジェファン、ハン・ミンス、イ・ジャンジョン、ソン・ チヨン、イ・ジェマン、キム・ミンジ、イ・ミョンソン、「岩石材質による保存処理 剤の現場適用性の評価」(2009)、pp80〜91


学術発表

  • 石造文化財の定量的風化毀損度診断法ワークショップ「石造文化財の風化毀損診断法 と保存処理第評価のための考察」(2007)
  • 春季地質科学技術共同学術大会ポスター「国内国家指定石造文化財の現況」(2007)
  • 秋季韓国文化財保存科学会ポスター「磨崖仏の風化毀損地図作成法の研究」(2007)
  • 秋季地質科学連合学術大会ポスター「慶州南山石とエチルシリケート系列処理剤の結 合特性研究」、2007
  • 東アジア文化遺産保存国際シンポジウムポスター「慶州南山磨崖仏の岩石学的特徴・ 損傷度の評価」(2007)
  • 春季韓国文化財保存科学会「石造文化財保存処理剤の定量化研究」(2008)
  • 春季大韓資源環境地質学会「慶州南山花こう岩を対象とする保存処理剤(表面強化 剤)の定量的評価」(2008)
  • 秋季韓国文化財保存科学会「泰安磨崖三尊仏の風化毀損度と保護閣内部の環境分析」(2008)
  • 文化財保存科学国際シンポジウム「石造文化財保存処理剤の性能評価・現場適用研 究」(2008)
  • 2008年韓日共同研究会「雲住寺石造文化財の保存案の調査研究」(2008)
  • 石造文化財保存国際シンポジウム発表「The study on performance evaluation and field application for conservation materials in the stone cultural heritages」(2008)
  • 春季韓国文化財保存科学会、イ・ジャンジョン、ハン・ミンス、チョン・ビョンギ ュ、ソン・チヨン 「石造文化財エポキシ系列充填剤の熱安定性に関する研究」(2009)
  • 春季韓国文化財保存科学会、ソン・チヨン、チョン・ビョンギュ、ハン・ミンス、 イ・ジャンジョン、「石造文化財保存処理剤の適用性研究-超音波測定法を中心に-」(2009)
  • 秋季韓国文化財保存科学会、イ・ミョンソン、キム・ジェファン、キム・ミンジ、 イ・ジェマン、ソン・チヨン、イ・ジャンジョン、「慶尚北道・英陽郡一帯の石造文 化財の構成岩石および風化特性を考慮した保存処理剤の現場適用性研究」(2009)
  • 秋季韓国文化財保存科学会、キム・ジェファン、キム・ミンジ、イ・ミョンソン、 イ・ジャンジョン、ソン・チヨン、イ・ジェマン、ハン・ミンス、「凝灰岩によって構成された石造文化財の保存方法研究」(2009)
  • 秋季大韓地質科学連合学術発表、イ・ミョンソン、キム・ジェファン、キム・ ミンジ、ソン・チヨン、イ・ジェマン、イ・ジャンジョン、ハン・ミンス、「慶尚北 道・ 英陽郡一帯の石造文化財の材質特性および風化状態を考慮した保存処理システ ムの開発研究」(2009)

動産文化財の保存環境改善研究

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展示室の保存環境調査

博物館・展示館のような文化財保存施設では、多くの文化財が保管・展示されている。このような室内環境は屋外より安定しているが、不適切な温度・湿度、照明環境、化学および生物学的空気汚染物質、害虫およびカビなどによる生物からの被害により文化財が損傷を受けることがあり、これにより固有の保存状態に影響を及ぼすことがある。したがって、このような環境因子を測定し、保存施設の環境の適合性を調査し、主要な環境因子を対象に促進・劣化試験を行って文化財に及ぼす影響について実験的な研究を持続させ、文化財を予防・保存するための基礎資料を提供する。

文化財保存施設の環境調査

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1.調査項目

環境因子には様々なものがあるが、当室が調査している項目は次の通りである。

1)温度
物体の温かさ、冷たさを示す尺度であり、℃、℉などで表示する。
文化財の材質は、低温より高温において劣化が速く進む。
2)湿度
空気中に含まれている水蒸気の割合であり、%で示す。絶対湿度と相対湿度があり、一般的に湿度といえば相対湿度を指す。
3)気流
室内の空気の流れであり、m/sで示す。
4)CO2(二酸化炭素、Carbon dioxide)
一般的に空気中の基礎濃度は約360~400ppmである。室内空気汚染の指標物質であり、人間の呼吸により主に発生し、室内の濃度基準は1,000ppmである。室内または地下で高い濃度を示す場合はあまり換気されないためであり、換気設備が正常に稼動すれば、濃度を下げることができる。文化財への影響は、炭酸塩を生成させ、顔料や保護膜のないものを変質させ、炭酸(H2CO3)を形成し、大理石(CaCO3)を溶解する。
5)CO(一酸化炭素、Carbon monoxide)
空気中における正常濃度は約0.1∼0.2ppmであり、二酸化炭素と同様炭酸塩を生成し、顔料や保護膜のない物を変質させ、血液中のヘモグロビンと結合し、血液の酸素運搬能力を低下させ、中枢神経に影響を及ぼす。
室内または地下で高い濃度を示す場合はあまり換気されないためであり、換気設備が正常に稼動すれば、濃度を下げることができる。
6)SO2(二酸化硫黄、Sulfur dioxide)
有機硫黄化合物を含む燃料が燃焼する際に発生する。高い水溶性で、水分と反応して硫酸(H2SO4)を、大理石(CaCO3)と反応して石膏(CaSO4•2H2O)をつくり、金属類を腐食させ、紙や繊維類の引張強度を弱める。また、目、鼻、気道の粘膜などを刺激し、慢性的に露出すると肺炎、気管支炎などの被害がある。
7)NOx(窒素酸化物)
窒素酸化物は種類が様々であるが、大気環境において問題となるほど多いのはNO(一酸化窒素)、NO2(二酸化窒素)であり、これらを通常、窒素酸化物(NOx)と呼ぶ。一酸化窒素は空気中で直接酸化するか、またはオゾンと反応して窒素酸化物になり、消滅する。また、空気中で水分と反応して硝酸(HNO3)となり、文化財の材質を弱化させ、とくに燃料の変色をもたらす。一般的に、一酸化窒素や窒素酸化物は、二つが共存する場合がほとんどなので、両物質が高濃度の場合は目や呼吸器などを刺激し、咳、頭痛、眩暈などを引き起こす。
8)HCHO(ホルムアルデヒド、Formaldehyde)
様々な建築資材の塗装や接着剤などから主に発生するので、新築の建物で非常に高濃度を示す。化学的に非常に強い還元剤なので、多くの物質と結合して、簡単に重合体を形成し、少量でも目、鼻、呼吸器を刺激するが、喚起設備を整えば、濃度を減らすことができる。
9)O3(オゾン、Ozone)
乾燥した空気の酸素が放電した際に発生する。酸化力が非常に強く、文化財の中でセルロース質、塗料、染料などに浸透し材質を変化させる。微量でも長時間吸入すると肺にダメージを与える。
10)H2S(硫化水素、Hydrogen sulfide)
酸化物を還元させやすく、空気中で酸化され、二酸化硫黄や硫酸塩に変わる。文化財の銀、銅の材質を腐食させ、目や呼吸器系の粘膜を刺激し、強い痛みを誘発する。また、悪臭がするので微量の濃度でも来訪者に不快感を与える可能性が高い。
11)粉塵(Particulate)
空気中に浮遊し、または飛散する微細な固相または液相の物質であり、埃、煤煙、煤、水滴などに含まれる。室内の粉塵は床から発生した埃、燃料の燃焼による埃、煤、タバコの灰、室外から入ってくる埃などにより濃度が高くなることがある。粉塵は文化財の表面に付着し、湿気と作用して変色・変質を起こす。


2. 調査方法

調査空間において、空気の流れが安定しており均一の濃度が測定できる場所を選定し、文化財の観覧に最大限害を及ぼさないように注意する。展示室では、来訪者の最も多い玄関ロビーと空気汚染物質の影響を多く受ける金属類、繊維類、紙類などの展示室を中心に調査し、平日、公休日、休館日を挟んで調べる。また展示室がいくつもの階に分かれている場合は、各階の1つ以上の展示室を調べ、階別の特徴を把握する。収蔵庫は、各地点を24時間以上調査し、環境変化の傾向を把握する。

ガス状汚染物質による材質損傷に関する研究

研究の目的

選定された動産文化財の有害環境因子についての適合性および影響力を検証動産文化財の保存環境管理マニュアルをつくるための科学的根拠資料を提供



研究体系

  • 文献資料調査および分析
    • 国内外の保存基準案を調査・分析
    • 国内保存施設内の環境実態調査資料を分析
    • ガス状汚染物質による文化財損傷資料を分析
  • 試験条件および代表試片の選定
    • 様々なガス濃度条件や実際の保存環境を反映
    • 有害ガスによる損傷に敏感な代表試片を選定
  • 有害ガスによる文化財の劣化試験装置を構築
    • 温度・湿度・有害ガスの濃度を調整・確認し、予備試験
  • 損傷度評価項目の選定および試片の製作
    • 劣化指標による損傷度評価項目を選定
    • 材質別に代表的な試片を選定・製作
  • 環境露出および損傷度の測定
    • 温度・湿度・有害ガスの濃度条件による露出試験
    • 繊維類、紙類、金属類の損傷度を測定
  • 測定資料の分析および解析
    • 文化財材質別損傷特性を究明
    • 文化財材質別安全基準濃度を設定

image 有害環境に露出した後、材質の損傷度を評価(物理的変化)
image 有害環境に露出した後、材質の損傷度を評価(光学的変化)
image 大気および室内汚染ガスが露出した後、材質の損傷度を調査(表面の変化)

古代の遺伝資源の系統学的研究

古代の遺伝資源の系統学的研究(R&D)は、韓国民族の人類学的起源と移動経路を究明するための自然科学的研究である。また、韓国民族の起源と関連した従来の考古学、歴史学、人類学の研究結果に基づき、韓半島および北東アジア周辺国の遺跡から出土した古代の人骨に関する分子遺伝学研究を行うことにより、韓国民族の古代史形成に関する科学的証拠資料を確保することを目的とする。また、考古遺跡から出土した人骨の血縁関係、性別などを分析することにより、古代の埋葬文化を理解するための科学的基礎資料を提供する。

image モンゴル・シャハル・トルゴイ匈奴積石墳における人骨収拾
image 実験室内での人骨調査
image 出土人骨のDNA分析

韓半島/アジア出土の古生物遺体(古人骨、動物骨)などを確保

所蔵している人骨と現在発掘中の遺跡から出土した人骨を対象としており、収集地域は韓半島を含むモンゴル、ロシア、中央アジアなど、韓国民族の形成と密接な関係のある地域が中心となる。人骨はできるだけ発掘の初期に直接収拾することを原則とし、別な専用施設に保管して体系的に管理する。


出土人骨

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古人骨の発掘および試料の採取

考古遺跡から人骨が発掘されると、人骨に関する体質人類学、分子遺伝学、骨化学的分析の可能性を考慮する必要がある。とくに、古DNA分析が必要な場合、人骨の発掘初期から分析にいたる全過程で発掘者、実験者のDNAによる汚染が起きないよう、細心の注意を払う必要がある。外部の汚染源を封鎖し、すべての参加者が防護服、防塵靴、防塵マスク、滅菌手袋を着用する。また、発掘・収拾過程で発生しうるDNA汚染を弁別するため、発掘者をはじめとし、人骨収拾、人骨研究などに関連したすべての参加者に対する遺伝子検査(但し、同意書作成者に限る)用検体(口腔上皮細胞)を採取する。人骨の収拾は頭部から足先へと進めるが、アクセスが難しい場合は外側(出入り口側)から内側へと順次行う。数人の人骨が混ざった場合、法医人類学的コーディング(cording)の手順によって試料を採取し、記録する。人骨は人骨保管箱に保管し、除湿剤を利用して湿度を30%未満に維持させる。人骨にアクセスする人数は最小限に抑え、保管箱はロック装置で保護し、人骨のサンプルの出納と残量について体系的に記録・管理する。


image 1. 収拾/発掘
image 2. 汚染物の除去
image 3. 保管

出土人骨収拾現場における注意事項

写真撮影
-発掘地の環境が写った全体の写真と骨が露出した埋蔵場所の写真、試料番号と実際の骨の位置が比較できる写真など、詳しく分けて撮影する必要がある。
発掘および採取者による汚染防止
-DNA分析を必要とするすべての試料の採取を担当する者は、必ず滅菌手袋(ラテックス/天然ゴム素材)、滅菌マスク、腕抜きなどを着用しなければならない。試料のある場所に向かって話をしたり、周辺での喫煙なども禁じられる。
迅速な採取作業
-外部に露出した古代の骨は非常に汚染されやすいので、迅速な採取および保管の手続きが必要である。
試料採取時に出来る限り該当の分析専門家が同伴することが望ましい。
-DNA分析方法および結果の解析のためには、発掘場所の現場観察が重要であり、専門家によって構成された最小限の人数で試料を採取しなければならない。
汚染物の除去
-骨に付着した土壌および不純物は水で洗浄してはならない。硬化処理はDNA分析ができなくなる可能性があるので、出土したまま保管する。
試料の保管および移動
-滅菌チューブ(50ml実験用チューブ)、滅菌紙袋、滅菌ビニル袋などに発掘場所、採取内容(試料番号、位置、日付、その他特異事項)、採取者名などを記録して骨を入れた後、密封して分析場所に移動するまで保管する。第1次保管以降、外部空気との接触を避けなければならない。

古DNA分子遺伝学的研究

古DNA分子遺伝学的研究の目的

  • 人類の起源や個体群の移動経路を究明
    • ミトコンドリアDNA分析による母系祖先の型を分析
    • Y染色体の塩基配列分析による父系祖先の型を分析
  • 墳墓から出土した人骨の遺伝子を分析
    • 性決定および個人の同定
    • 合葬、殉葬など被葬者の血縁関係および共同体の関係を究明
  • 古代微生物の同定および疾病との関係を究明
    • 埋葬場所の環境を究明
    • 疾病微生物の同定による保健環境の研究
  • 出土した動植物の残存物分析
    • 動植物の種を判別し、現生の動物種との類縁関係を究明
    • 食生活習慣、家畜飼育、農耕、動植物の伝播経路を究明

古DNA分析実験室

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古DNAを研究するためには実験者と外部環境によるDNA汚染についてとくに注意しなければならず、そのような汚染源を遮断する研究施設が重要である。出土した人骨のDNA抽出室は一般的なDNA分析室とは区分し、とくにDNA増幅、クローニングなどを行う実験室とは必ず分けられていなければならない。


古DNA抽出および分析

image 1. DNA抽出
image 2. DNA増幅およびシークエンシング
image 3. 系統学的分析

古代遺伝資源の系統学的研究(R&D)の推進戦略

推進戦略 中心目標および推進事項 最終的成果
コレクション 支石墓などから生物の残存物の出土状況に関するモニタリングおよび資料を確保
→ 考古生物の残存物コレクションを構築
古代遺伝資源のデータベースを構築
インフラ 古代人のDNA専門家および器材を確保
→ 国際標準研究室を構築
考古発掘資料分析の支援を拡大
技術 古代人のDNA分析技術を開発(独自のTRMを確立)
→ 古DNA分析技術の蓄積および関連研究をリード
研究協力の成果を導出(咸安城山山城に関する環境考古学的研究)
情報 先端バイオ情報技術を利用
→ 古代遺伝資源研究情報システムを構築
韓民族の遺伝的起源を究明
融合 人文学(考古学、人類学、歴史学)分野と融合・複合研究を行う。
→ 部局間の研究協力/学際的な共同研究を推進
韓民族の遺伝的起源を究明(R&D)

考古試料分析技術および解析技術開発研究(R&D)

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微細組織分析前処理用炭素コーティング

韓半島および周辺地域から出土した遺物など古代文化遺産に関する自然科学的調査および分析により、製作技術など生活文化を究明し、移動経路を推定する科学的研究である。遺跡から出土した土器・陶磁器、顔料、金属遺物などの分析資料をデータベース化し、産地や交易について明らかにできる特性因子を発掘し、これらの文化間の製作技法および移動経路追跡システムを構築する事業である。

文化情報因子の探索

古代遺跡・遺物から民族の生活文化と技術文化に関する情報を抽出できる因子を発掘する。古代土器、木材、土壌、織物などを対象に分析を試み、遺跡の時代、地域に伴う生活・技術の文化情報を獲得する。

image 忠清北道・梧倉邑・場垈里遺跡
image 生物・微生物を利用した遺跡環境情報研究
image 出土した木材の解剖学的特性研究
image 古代染色技術情報研究-求礼・孫氏墓出土の服飾
image 出土土器の分析

民族文化情報解析技術研究

民族文化情報解析技術研究では民族技術文化の特性と移動経路をより客観的でかつ効率的に究明するためのシステムを構築することを目標に掲げている。そのために持続的な遺物分析および遺物分析資料の収集・管理のためのデータベースプログラムを開発し、蓄積した資料を総合分析して有意の文化情報が導出できる統計分析技法の開発を行う。2013年まで土器、陶磁器、青銅器、硝子に対する分析資料のデータベースおよび統計分析機能を備えたシステムを構築する計画である。


分析データの収集・管理

image 遺物分析情報の収集・管理プログラム
image 統計資料の分析技法開発
image 文化情報の導出-融剤による硝子の地域的分類

分析技法の標準化および分析新技術開発

古代の陶器・土器に関する研究は微量成分、主成分、鉱物学的特性分析などによる製作技術および生産地の推定研究が行われており、大量の分析データの処理および様々な遺跡に関する分析結果の総合比較・解析のための統計的解析技法を構築することを目的とする。古代顔料に関する分析研究は主に物質の究明のために行われてきたが、分析機器の発達により先端分析機器を利用した非破壊分析技法および解析法が確立できる。

中期ロードマップ

組織特性とXRDパターンを利用した焼成環境の判断基準(案)を設ける。

2012 組織特性およびXRDパターンを利用した土器の焼成環境判断基準の研究
  • -組織特性数値化技法の適用性を評価
  • -焼成環境とXRDパターン変化の相関関係を究明
2011 土器焼成温度の推定のための断面組織特性数値化技法の研究
  • -土器断面組織イメージの獲得条件を確立
  • -硝子窒化度など組織特性数値化技法を確立
2010 土器の物理化学的特性分析基準試片の製作
  • -粘土の化学組成別焼成試片を製作・分析
  • -化学組成および焼成環境による土器の組織特性の変化に関する研究

PXRFを利用した古代顔料非破壊分析データ解析法を提案

2015 木材、紙類素地に適用された顔料のPXRF分析の特性研究
  • -木材、紙類素地の選定および多層彩色試片の製作
  • -P-XRFを利用した木材および紙類素地に適用した彩色顔料の表面分析データの特性を確認
2014 土壁素地に適用された顔料のPXRF分析特性を研究
  • -土壁および多層彩色試片を製作
  • -P-XRFを利用した壁および織物素地に適用された彩色顔料の表面分析データの特性を確認
2013 古代~近代無機質顔料のX-線透過挙動の研究
  • -古代~近代を代表する無機質顔料(赤、青、緑、 黄、白)の確保および彩色試片の製作
  • -顔料の種類および彩色の厚さによるX-線透過影像 法による挙動確認

古代~近代の顔料分析資料のデータベース化および顔料同定プログラム開発計画を樹立

2015 古代~近代の顔料同定プログラム開発計画を樹立
  • -古代~近代の顔料特性分析資料集を発刊
  • -顔料分光分析ピークmatching方法の研究
2014 古代~近代の顔料分析および前処理技法の探索
  • -古代~近代の顔料の特性分析および資料のデータ ベース化
  • -同位体分析のための顔料前処理技法の探索
2009
~2013
古代~近代の顔料試料の確保および基礎分析
  • -顔料分析技術改善用試料を持続的に確保
  • -確保試料の基礎分析

有機質文化財の保存・保管技術研究(R&D)

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展示室の保存環境調査

現在、韓国では有機質文化財に関する昆虫のアクセスと微生物の発生を抑制するため、環境調節法、薫蒸処理、防虫・防腐剤の投入法などを利用している。ところが、その際に使用されるメチルブロマイドのようなガスは環境規制物質に指定されており、パラホルムアルデヒドやチモールのような昇華性殺菌・防カビ剤も環境や文化財の材質、人体への有害性が問題視されたことがある。そのため、国家研究開発事業(R&D)として進めている本研究では天然由来の成分を確保し、その生物活性阻害効果とともに、現場に適用した場合必要な文化財材質安定性、その他の有害性の如何を検討することで、より環境に優しく、安全な有機質文化財保存用成分を開発することを目指している。

天然由来の生物活性阻害成分の開発過程

天然物の選別および有効成分の抽出、精製

1.自生植物資源および伝統的な韓方の材料を利用した天然物抽出候補群を選定
2.天然物の溶媒別抽出および段階別分画
3.抽出および分画物の精製による有効成分の分離


有効成分の抗真菌および防虫の活性を探索

1.天然由来成分の生物学的活性阻害効果をスクリーン
2.抗真菌活性(paper disk soaking methodなど)、防虫を活性(接触毒性効果の測定など)


材質および人体、環境安定性の評価

1.活性有効成分の科学的反応性および安全性の検索
2.有機質文化財の材質安定性、人体呼吸および接触安定性、環境安定性

文化財保存用防虫・防菌剤の開発事例

遺物保存のために伝統的に使用されていた薬剤から抽出した天然成分の化学的・生理的特性を研究することによって祖先の知恵を科学的に証明し、環境と文化財の材質に影響のない文化財保存用防虫・防菌剤を研究している。2000年には伝統韓方材料から文化財の材質に影響を及ぼさない防虫・防菌性物質を抽出するのに成功した。文化財保存のための防虫・防菌剤を国内ではじめて開発したことになる。この結果を受け、2001年には特許出願し、紙・繊維類の文化財を効果的に保存・管理するために、現在様々な製品開発を行い、2003年には商品化を完了した。2004年に特許登録(第0421538号)するなど、生物から文化財を保護するための先導的な研究を行っている。

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image 透過性フィルターを利用した自然芳香の形式
image ファン装置による強制芳香の形式

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Asia Cooperation Program on Conservation Science 文化財廳 國立古宮博物館 Korea National Commission for UNESCO